
【Connected Japan開催報告】これからの高等教育機関におけるIT戦略
コレオス株式会社は、8月27日に高等教育機関のCIO、IT部門長とその教職員の方を対象にセミナーイベント「Connected Japan -これからの高等教育機関に求められるIT戦略-」を開催いたしました。本記事は、各講演のまとめをご紹介する、開催報告となります。
テクノロジーが急速に発展する中、高等教育機関を取り巻く環境やIT部門においても、教職員の負担軽減、データによる意思決定、DX対応など教職協働に向けてより迅速なアクションが求められるようになっています。そこで本セミナーでは、「これからの高等教育機関に求められるIT戦略」をテーマに、教育DXの中核を担うCIO、高等教育機関のIT部門のリーダーとご関係者を対象に「DXを推進する組織づくり」と「時流によるニーズへの対応・実装力」の向上に向けて、国内3大学の講師陣による講演、国内外の事例と最新の教育ICTソリューションをご紹介しました。
ぜひ、高等教育機関のIT部門、DX推進部門にご所属の方、また教育ICTにご関心をお持ちの皆様のご参考にしていただけますと幸いです。
目次[非表示]
- 1.開会挨拶David Ells, Managing Director, Open LMS
- 2.基調講演「早稲田大学の情報戦略のいま」早稲田大学 情報企画部長 人間科学学術院 教授 菊池 英明 氏
- 3.基調講演「早稲田大学におけるLMSリプレイスの舞台裏」早稲田大学 情報企画部 情報企画課長 柴山 拓人 氏
- 4.主催者講演「『知の総和』答申から見えた高等教育の課題と可能性 〜AIでの教育方法とコンテンツ整備、インフラ、データ活用、セキュリティまで海外事例もご紹介〜」 Liam Liddicoat, Regional Director APAC, Open LMS, Learning Technologies Group plc
- 5.主催者講演:「教育DXとテクノロジーの最前線」コレオス株式会社 エデュケーションセールスグループ マネージャー 澤田 良二
- 6.講演1 「佐賀大学における入学前教育プログラムの設計と効果」佐賀大学 アドミッションセンター 副センター長 自然科学域理工学系 准教授 露木 隆 氏
- 7.講演1「佐賀大学におけるOpenLMSの運用について」佐賀大学 教育学部 助教(併任:教育開発推進センター ICT教育推進部門) 古賀 崇朗 氏
- 8.スポンサー講演I「オープンバッジだけじゃない!教育現場を変えるデジタル証明書とブロックチェーン活用」Digit.ink Japan合同会社 ジャパンビジネスマネージャー 渥美 尉士 氏
- 9.講演2「北海道大学におけるKalturaの導入活用事例」北海道大学 情報基盤センター 教授 オープンエデュケーションセンター 副センター長 重田 勝介 氏
- 10.スポンサー講演Ⅱ「TeacherMatic:AIで授業を刷新!」Satoshi Saito, Regional Advisor, Avallain AG Regina Gan, Client Success & Partnership Manager, Asia, Avallain AG
- 11.講演者パネルセッション
- 12.最後に
開会挨拶
David Ells, Managing Director, Open LMS
開会挨拶では、主催者のLearning Technology Group社(以下、LTG社)Open LMS部門のマネージングディレクターのDavid Ells(デイヴィッド・エルス)が来場の御礼と、同社が開発、弊社コレオスが国内の教育機関に提供している学習管理システムOpen LMS(オープンエルエムエス)をご紹介しました。

また本日のセミナーを通して、これからのIT部門が果たす役割として、今後、いかにして日々の偶発的なシステム運用業務を、教員や学生のための教育支援業務に集中させられるか。また、私たちの最終目標はテクノロジーを活用してより良い世界を築くこととした上で、AIが進化する今こそ、我々人間の共感と理解に基づく意思決定の重要性を改めて考えていただけるよう提言しました。
基調講演「早稲田大学の情報戦略のいま」
早稲田大学 情報企画部長 人間科学学術院 教授 菊池 英明 氏
最初の基調講演では、早稲田大学の情報企画部長で、人間科学学術院教授の菊池英明(きくち ひであき)先生より、中長期計画「Waseda Vision 150 and Beyond」の実現に向けて取り組んでいる、ICTを活用した「情報化重点施策」についてお話しいただきました。
同大学は、2032年の創立150周年に向けて、「研究の早稲田」「教育の早稲田」「貢献の早稲田」の3つを柱に、2050年までにアジアで最も効果的に学べる大学を目指しています。
ICTを活用した情報化重点施策の推進体制としては、情報化推進本部が基本方針の策定や最終承認を行い、諮問委員会やシステムごとの部会で議論・実行を進めています。2024年から3年間は「DX拡大定着期」とし、学びのパーソナライズやスマートキャンパスの実現、エビデンスに基づく大学運営、スマートオフィス・スマートワークの実現を図っています。

DX拡大定着の推進体制強化の一環としては、AIを活用した教育の質向上、研究者のクラウド利用支援、迅速な意思決定を可能にするデータ活用、セキュリティ強化、生成AIを活用したチャットボット導入、Slackによるコミュニケーション活性化、デジタル人材の育成などが進められています。
早稲田大学の情報戦略は、技術を活用しながらも人間的な目的意識と共感を重視し、教育の質を向上させることを目指しています。例えば、学生一人ひとりに合わせた学びの機会を提供する「学びのパーソナライズ」、教職員の働き方改革のための「スマートオフィス・スマートワーク」、Slackを活用した部門間のコミュニケーションの促進などが挙げられます。また、生成AIを活用したチャットボット導入や、デジタル人材育成も進められており、大規模な教育機関でありながら、大学に関わる全てのステークホルダーに配慮、思いやりに溢れた戦略に見え、参加者からも多くの関心が寄せられました。
基調講演「早稲田大学におけるLMSリプレイスの舞台裏」
早稲田大学 情報企画部 情報企画課長 柴山 拓人 氏
基調講演のお二人目は同じく早稲田大学 情報企画部の柴山拓人(しばやま ひろと)様より、LMS(学習管理システム)の刷新プロジェクトと、コロナ禍での全学オンライン授業対応について現場での体験談をお話しいただきました。
同大学は従来、独自開発のLMS(学習管理システム)を利用していましたが、保守性やスマホでの利用に課題があり、2018年から教員を交えた比較検討を行い、Moodleベースでクラウドの「Open LMS」を採用しました。ところが、2019年秋に本番環境をリリースした矢先、2020年度はコロナ禍による全授業オンライン化が重なり、プロジェクトは一気に難易度を増します。
新システムの「Waseda Moodle」はOpen LMSを中心に動画配信や類似度判定などを組み合わせた構成となっており、当初は試行錯誤が続きましたが、コレオス、LTG社との連携や「CTLT(Center for Teaching, Learning and Technology)」の設置により安定運用を実現しています。
オンライン授業対応ではZoomとBlackboard Collaborate(現Class for Webクラス フォー ウェブ)を提供し、サーバー増強やCDN切り替えで障害を乗り切り、結果としてコース移行率は約98%。動画トラフィックは旧システムの1年分をわずか1か月で消費するなど、急速な定着に成功しました。
成功の鍵は、選定段階からの教員の巻き込み、大学トップからの明確な方針打ち出し、コロナ禍による強制的なオンライン化と現場への権限委譲、ベンダーとの連携が複合的に機能したことであると言います。また、「現場に権限を委譲し、即応できる体制があったからこそ乗り越えられた」との言葉が印象的でした。
主催者講演「『知の総和』答申から見えた高等教育の課題と可能性 〜AIでの教育方法とコンテンツ整備、インフラ、データ活用、セキュリティまで海外事例もご紹介〜」
Liam Liddicoat, Regional Director APAC, Open LMS,
Learning Technologies Group plc
主催者講演では、主催者LTG社Open LMS部門APACリージョナルディレクターLiam Liddicoat(リアム・リディコート)より、日本の高等教育が直面するDXの課題と、AIやデータ活用による新しい学びの可能性について講演しました。
中央教育審議会の答申「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~」では、大学にDX推進と学生本位の学習が求められており、AI活用、データ統合、セキュリティ強化、個別最適化学習などが重要ですが、限られた予算での実現は各教育機関にとって大きな挑戦です。

Open LMSなら「個人用学習デザイナ(PLD)*」を通じて、学生一人ひとりの学習状況に応じた自動アクションを設定できます。例えば、正答率が低い学生に講師との面談を通知するなど、学習支援を効率化します。さらに、OpenAIなどのLLM統合により、AIアシスタントや教材作成の自動化も視野に入ります。海外では、ニューサウスウェールズ大学がPLDと120以上のEdTechを統合し、AIで学習を支援。ノースカロライナ州では58校60万人の学習データを統合し、進捗管理に活用しています。
セキュリティ面でも、Open LMSはISO27001やSOC2認証を取得し、GDPRや日本法にも準拠。BIツール連携で詳細な分析が可能で、日本語完全対応やAPI連携、多言語・モバイル対応にも対応しています。20年以上の実績を持つOpen LMSは、コレオスとの連携で日本の大学文化に合わせた柔軟なDX支援を提供しています。
最後に、LTG社が今後、単なるシステムの導入ではなく、どのように教育機関を支援していくのかを示し、AIとデータ活用を軸にした未来像に参加者の関心が集まりました。
*個人用学習デザイナ(PLD):個別最適化された学習ルートの設計、実施を効率的に行える機能。学生一人ひとりの状況や成績に応じたアナウンス、教材やテスト受験への誘導などの学習ルートを予め教員が設定することで、大人数の授業も少ない負荷で確実に実行できます。
主催者講演:「教育DXとテクノロジーの最前線」
コレオス株式会社 エデュケーションセールスグループ マネージャー 澤田 良二
続いて、コレオス株式会社の澤田良二(さわだ りょうじ)より、コレオスが海外製教育ICTソフトウェアの日本展開や運用支援を手がけ、Open LMSを中心に動画プラットフォーム、学修分析ツール、AIアシスタントなどを組み合わせた“学びのエコシステム”を提供していることをご紹介しました。
Open LMSはMoodleベースのSaaSとしてAWS基盤による高い安定性とセキュリティ環境によるクラウドで提供され、個別最適化学習や見やすいレポートなど独自機能を搭載。さらに、AI統合による教材作成やチャットボット機能の開発が進行中で、今後は学習フローの自動生成や離脱リスク分析への対応も視野に入れています。

講演1 「佐賀大学における入学前教育プログラムの設計と効果」
佐賀大学 アドミッションセンター 副センター長
自然科学域理工学系 准教授 露木 隆 氏
佐賀大学アドミッションセンター副センター長で自然科学域理工学系の露木隆(つゆき たかし)先生が、入学前教育の背景から具体的なプログラム内容、そしてその成果までをご紹介くださいました。
同大学では、基礎学力の定着と学習意欲の向上を目的に、全学部統一の入学前教育プログラムが設計されました。特に「高校から大学への円滑な接続」を重視し、基礎学力と学習習慣の形成に力を入れています。これにより、入学後の学びにスムーズに移行できるよう、段階的な準備が行われています。プログラムは自宅で取り組めるオンライン教材を中心に構成されており、学生自身が進捗状況を把握できるようになっています。また、教員からのコメントやアドバイスによるフィードバックも充実しており、学びの質の向上につながっています。

教材には、先輩や教員が執筆した完全オリジナルテキストや、Open LMSで配信される動画が含まれており、大学と高校との学びの違いを理解することができます。内容は高校の復習だけでなく、大学での専門的な学びへの導入も含まれており、学習意欲の向上にも寄与しています。また、学習者自身が感想や意見をまとめて提出したり、学習計画を作成したりするなど、能動的な姿勢が求められます。さらに、受講者同士や先輩との交流機会が設けられており、モチベーションの維持、向上にもつながっています。希望者には授業体験や先行履修の機会も提供され、入学者の大学での学びへの期待感を高めています。
実施後のアンケートや成績分析では、入学後の成績が安定している学生が多く、学習習慣の定着や学生同士の交流促進といった成果が確認されています。
講演1「佐賀大学におけるOpenLMSの運用について」
佐賀大学 教育学部 助教
(併任:教育開発推進センター ICT教育推進部門) 古賀 崇朗 氏
教育学部助教であり教育開発推進センター ICT教育推進部門も兼任する古賀崇朗(こが たかあき)先生より、OpenLMS導入の背景、運用上の工夫、そして得られた成果についてご講演いただきました。
従来は、予算の制約からオンプレミスでMoodleを構築し、他サーバーの空きスペースで運用していました。しかし、管理業務の負担やセキュリティ、スタッフ不足など多くの課題があり、さらにユーザーのメールアドレス登録が任意だったため、受講者との連絡やサポートにも支障が生じていました。

入学前教育のリニューアルに伴い、クラウドへの再構築が決定。新システムにはMoodleベースであること、設定や運用のサポート体制が求められ、それらを満たすOpen LMSを採用しました。全体打ち合わせは10月下旬、入学前教育は翌年1月開始という短期間での準備でしたが、既存コースや教材を円滑に移行でき、コレオスの支援もあり無事完了しました。
クラウド化により、システム維持管理の負担が大幅に削減され、コースやコンテンツ作成に集中できるようになりました。「完了プログレス」機能で進捗状況の把握するのも容易で、「フォーラム」での定期的なコミュニケーションにより学習意欲も向上。メールアドレス登録を必須化したことで、連絡もスムーズになりました。
今後は、対象者の拡大、未活用機能の導入、教育内容の強化、そして運用体制の維持を目指し、さらなる進化を続けていくとのことです。
また来年度は、化粧品開発を研究するコスメティックサイエンス学科の新設も予定されており、さらに個別化された支援や他学部への展開も視野に入れています。佐賀大学の教育の質向上に向けた取り組みが、ますます期待されます。
スポンサー講演I「オープンバッジだけじゃない!教育現場を変えるデジタル証明書とブロックチェーン活用」
Digit.ink Japan合同会社 ジャパンビジネスマネージャー 渥美 尉士 氏
スポンサーによる講演では、コレオスが6月より取り扱いを開始したデジタル証明書発行ツールについて、開発元のDigit.ink(デジットインク)社よりご紹介いただきました。同社は2021年に米国で設立、現在14カ国で事業を展開し、2024年から日本市場にも参入しています。
教育機関で進む証明書のデジタル化は、紙やPDFと比べて改ざん防止に優れ、印刷・郵送の手間を削減。さらに、LMSからの自動発行も可能で業務効率化に寄与します。規格には、スキル認証に使われるOpen Badges、卒業証明書などに利用されるBlockcerts、相互運用性の高いW3C標準のVerifiable Credentials(VC)などがあり、Apple WalletやGoogle Walletを使ったモバイル学生証も海外で普及しています。

Digit.inkはこうした規格に対応し、PDFや印刷にも対応する柔軟な発行ツールを提供。日本では山形大学をはじめ、大学・企業・NPOなど20以上の導入実績があります。今後も技術面・運用面の両方から証明書デジタル化を支援していく方針です。
講演2「北海道大学におけるKalturaの導入活用事例」
北海道大学 情報基盤センター 教授
オープンエデュケーションセンター 副センター長 重田 勝介 氏
続いて、北海道大学情報基盤センター教授でオープンエデュケーションセンター副センター長の重田勝介(しげた かつすけ)先生より、教育DXの背景とKaltura(カルトゥーラ)活用事例についてご講演いただきました。
日本の高等教育は、18歳人口の減少により進学率が伸び悩む中、2020年のコロナ禍を契機にICT活用が急速に進展しました。2023年度には全国大学の約90%がLMSを導入、Moodleユーザーが最多となり、今やハイブリッド型授業も珍しくありません。
北海道大学では教育DXを推進するため「オープンエデュケーションセンター」を設置し、教員と共同で教材制作、専門スタッフによる権利処理や映像編集、オープンコースウェアやMOOC向け教材制作、授業設計やシステム活用支援などを展開。さらに、学生向けにデジタル制作環境や、認定スタッフによるサポート、創造的活動を支援するラーニングスペースも提供しています。
Kalturaは2014年から動画配信に活用され、オープンコースウェアや科学技術教育、VR教材など外部向けコンテンツを公開。累計再生時間は約108万時間に達しています。
北海道大学は、専門職員による教材開発支援体制を整備し、ハイブリッド型教育の普及を進めています。今後もKalturaをはじめとするICTツールの活用により、教育の質向上と学習環境の多様化をさらに推進していく方針です。
スポンサー講演Ⅱ「TeacherMatic:AIで授業を刷新!」
Satoshi Saito, Regional Advisor, Avallain AG
Regina Gan, Client Success & Partnership Manager, Asia, Avallain AG
続いて、スポンサーのAvallain AG(アヴァレイン)社より、同社が提供するAI教育支援ツール「TeacherMatic(ティーチャーマティック)」をオンラインにてご紹介いただきました。Avallainは、2000年代初頭に教育のオンライン化が進む中、紙の教材からデジタル化への対応に苦慮する出版社と教育現場のギャップを埋めるために誕生。以来、教材のデジタル化を推進し、出版社・教員・学習者をつなぐ教育プラットフォームを提供しています。
TeacherMaticは、教員の業務負担軽減を目的に開発されたAI支援ツールです。世界的に授業準備や採点、教材作成などの業務が過重であることが指摘され、ある調査では教員の約40%が1日10時間以上勤務しているという結果もあります。TeacherMaticは、こうした課題に対し、効率化と教育の質向上を両立するソリューションとして注目されています。

特徴は、直感的なUIで複雑なプロンプトなしに教材、テスト問題、授業計画などを生成できること。教員から管理職まで幅広い業務に対応し、ユーザーのフィードバックを反映しながら進化を続けています。基盤にはMicrosoft Azureを採用し、セキュリティを確保。入力情報はAIの学習に使用されず、プライバシーも保護されます。
実際の教育現場では「週6〜8時間の準備時間が削減された」「日曜の午後が自由になった」といった声が寄せられ、効果が確認されています。今後も教育機関との連携を深め、より多様なニーズに対応した機能拡充を進める方針です。
講演者パネルセッション
セミナーの最後には5名の講師をパネリストにお迎えしたパネルセッションを開催いたしました。大学ICTやIT部門が抱える課題、期待に関する現場の課題と今後の方向性について、参加者からの質問も交えた活発な議論が交わされました。
まず話題となったのは、教員の業務負荷軽減と教材作成支援です。教材作成の手順や収録に必要な機器、ソフトウェア、スタジオなどの環境整備が重要であり、初年度に作成した教材を再利用・ブラッシュアップすることで、2年目以降の運用効率化が可能になるという意見が出されました。
次に、18歳人口の減少と学生獲得の課題について。YouTubeやSNSなど多様なメディアを活用し、18歳人口に限らない幅広い層へのPR強化が必要とされました。また、外部研究費や寄付など収益源の多様化、大学間連携による合同プログラムの展開も重要な戦略として挙げられました。

ID管理やコンテンツのライフサイクル管理も大きなテーマです。正規の学生・教員以外のアカウント作成は極力制限しつつ、グループ管理機能で柔軟性を確保すること、さらにストレージ容量や費用負担を考慮し、不要データの削除やアーカイブ化を積極的に進める必要があります。保存年限は2年や5年などの例が示され、アーカイブへのアクセスは教員や申請者に限定する運用が望ましいとされました。
また、AIの利用指針やポリシー策定については、多くの大学が書面1~2枚程度の簡易なポリシーを教員・学生に共有している現状が紹介されましたが、今後は価値観や状況の変化に合わせた継続的な更新が課題になるとの指摘がありました。
最後に、新システム導入や改変時の合意形成について。アンケートなどで意見を収集しても、一部の教員の影響力が大きいケースが多く、変化への対応(チェンジマネジメント)が苦手な大学が多いことが課題として挙げられました。外的動機だけでは納得を得にくいため、明確なメリットを示し、内的動機づけや積極的な参加を促す工夫が必要だという意見で一致しました。
このセッションは、国立・私立大学、教員・職員の垣根を越えて、大学ICTの現場が今直面している課題と、その解決に向けた具体的なヒントを示す貴重な機会となりました。
最後に
以上、各セッションの概要と開催報告をお届けしました。
本セミナーでは、高等教育機関のIT部門をリードする皆様の講演やパネルディスカッションを通じて、DX推進に向けた現場の知見を共有できたことを大変うれしく思います。また、弊社コレオスでは、Open LMSに加え、新たに取り扱いを開始したソリューションを開発元とともにご紹介しました。
講師の皆様のお話から、IT部門はシステム運用にとどまらず、教学部門との連携や中長期計画の実現、教育の質を支える戦略を担われていることを改めて実感するとともに、引き続き私たちもどのように皆様をご支援すべきかを考える貴重な機会となりました。
弊社コレオスは、今後もこうしたセミナーを通じて高等教育界における知見共有と実践の場を提供し、単なるベンダーではなく、教育DXの伴走者として皆様に貢献してまいります。教育DXや教育ICTに関するお困りごとやご要望がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。









