企業にDXが求められる背景と取り組むメリット・デメリット
不確実性が高まる現代において、企業が存続し、価値を提供し続けていくためには、市場の動向や消費者ニーズなどの変化に迅速かつ柔軟に対応できる組織体制が求められます。このような組織体制を実現するための取り組みとして欠かせないのが“DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)”です。
最近ではDXという言葉をよく耳にするようになりましたが、「なぜDXが求められているのか」「どのようなメリット・デメリットがあるのか」など、詳しい内容についてよく知らない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、DXの基礎知識をはじめ、企業のDXが求められる背景、DXに取り組むメリット・デメリットについて解説します。
目次[非表示]
- 1.DXとは
- 2.企業のDX推進が求められる背景
- 3.DXを推進するメリット
- 3.1.①生産性の向上
- 3.2.②新たな商品・サービスの創出
- 3.3.③BCP対策の強化
- 3.4.④業務改善
- 4.DXを推進するデメリット
- 5.まとめ
DXとは
DXは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授により提唱されました。総務省では、DXについて以下のように定義されています。
▼DXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
引用元:経済産業省『DXレポート2』
また、経済産業省では、2018年の『DX推進ガイドライン(※)』で企業でのDXの取り組みを推進しています。
※現在は、『デジタルガバナンス・コード2.0』に名称が変更されている。
出典:総務省『令和3年版 情報通信白書』/経済産業省『DXレポート2』
企業のDX推進が求められる背景
企業のDX推進が求められる背景の一つに、“2025年の崖”への対応が挙げられます。2025年の崖とは、DXを実現できないことによって発生する経済損失のことをいいます。
既存システムの複雑化・ブラックボックス化によって組織横断的なデータ活用が進まない状態では、ビジネスモデルを柔軟に変更できず、DXを実現できません。それだけでなく、システムの保守運用にかかるコストの肥大化、技術者不足によって、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が発生すると予測されています。
▼2025年の崖
画像引用元:経済産業省『DXレポート(サマリー)』
また、近年では、コロナ禍やデジタル化の影響によって事業環境が変化しています。企業の価値創出を図り、市場における競争優位性を確立するには、消費者のニーズに合わせて企業文化やビジネスモデルを変革することが求められます。
さらに、働き方改革が推進される今、労働時間の削減や生産性向上、多様な働き方などを実現するには、DXによって業務プロセスや作業方法などの仕組みを改革することも求められます。
そのほか、現場や上層部の意思決定、法令順守対応といった業務を正確に、かつ要求時期までに早く対応するQCD(Quality・Cost・Delivery:品質・コスト・納期)の考えが重視されていることも背景の一つと考えられます。
出典:経済産業省『DXレポート(サマリー)』『DXレポート2』
DXを推進するメリット
企業がDXに取り組むことで、生産性の向上や新たな価値の創出、業務改革などのさまざまなメリットが期待できます。
①生産性の向上
従来の業務フローや作業方法を見直して、自動化・省人化・電子化を図ることで、効率的な業務体制を構築できるようになり、生産性の向上につながります。
デジタル技術を活用して、これまで人の手で行ってきた業務を自動化できれば、人的リソースをコア業務に充てることが可能になるため、人材不足の解消にもつながります。
また、ITツールやロボットを活用して業務をデジタル化すると、紙書類や人の手による作業がなくなります。ヒューマンエラーを防ぐことで、業務品質を維持することが可能です。
業務プロセスが最適化されることにより、製品サービスの提供に関わるQCDの要素も改善できるようになり、結果として顧客満足度や競合優位性につながると期待できます。
②新たな商品・サービスの創出
DXを実現すると、新たな商品・サービスの創出につながる可能性が期待できます。
デジタル技術・ITツールを用いて、市場の動向や顧客のニーズを分析することで、これまでにない新しい商品・サービスのアイデアが生まれることがあります。
そのアイデアを基にビジネスモデルを刷新できれば、企業の付加価値が生まれ、差別化による市場競争力の強化、顧客満足度の向上につなげられます。
③BCP対策の強化
企業のBCP(Business Continuity Management:事業継続計画)対策を強化できることもDXに取り組むメリットの一つです。
BCPとは、自然災害や感染症の流行などの緊急事態が発生したときに、事業を継続できるように対策・復旧方法をまとめた計画のことです。
不測の事態が発生した際、業務をストップせずに事業を継続するためには、物理的な環境に左右されないITインフラ環境を整備する必要があります。
DXを通じて、クラウドへの移行、基幹システムの統合、リモートワークの環境整備などを行うことで、場所・端末の制約をなくして、緊急時にも自宅やほかの拠点で業務を行えるようになります。
また、文書の電子化やデータの一元管理と適切なバックアップができる体制を整えると、災害が発生した場合でも、紙書類の消失、システムの破損によって情報資産が消失したり、漏洩してしまったりするリスクを防止できます。
④業務改善
DXによって業務のデジタル化や自動化を図ることで、業務改善につながるといったメリットもあります。
人の手による業務の処理を自動化したり、オンライン上で担当者間のやり取りを行ったりできる環境を整えることで、業務時間・フローの短縮、リモートワークの導入が可能になります。これにより、長時間労働の削減、多様な働き方ができるようになり、働き方改革にも貢献します。
また、BPMツールを活用して業務の自動処理やペーパーレス化を図ったり、分析・改善を行ったりすることで、業務プロセスを可視化・管理して、状況を把握できるようになります。その結果、スピーディな意思決定ができるようになり、環境の変化に柔軟に対応しながら、業務プロセスのさらなる改善を図ることが可能です。
DXを推進するデメリット
DXを進めるにあたっては、デメリットも存在します。現状課題を洗い出したうえで、必要な取り組みや導入するデジタル技術・ITツールなどを整理することがポイントです。
①コストの発生
DXのデメリットとして、コストが発生することが挙げられます。
業務そのものや業務プロセスの変革には、既存システムを刷新したり、ITツールを導入したりするのにコストがかかります。
また、ITインフラ環境の整備やシステム構築を行うために、ITに関する知識・技術を持つ人材を確保する必要があります。DXに取り組む際は、人材採用・教育にかかるコスト、運用にかかるランニングコストも考慮しておくことが重要です。
②業務体制の変化
DXによって業務体制が変化するため、システムの移行や業務フローの定着まで時間・労力がかかる可能性があります。
よりよい業務体制を構築するには、組織横断的に取り組む必要があるため、DXの実施計画やスケジュールなどを定めたうえで、長期的な視点で計画的に進めることがポイントです。
まとめ
この記事では、企業のDX推進について以下の内容を解説しました。
- DXとは
- DXが求められる背景
- DXを推進するメリット・デメリット
企業がDXに取り組むことで、生産性の向上や新たな商品・サービスの創出、BCP対策の強化、業務改善といったさまざまなメリットが期待できます。
DXを成功させるためには、自社の課題・目標を明確にしたうえで、DXの実施計画やスケジュールなどを定めて、組織全体で長期的に取り組むことが重要です。
DXを効率的に進めるうえで役に立つソリューションの一つとして挙げられるのが『コレオス』が提供する、BPMソフトウェア『BP Director』です。業務のデジタル化やプロセスの最適化を支援して、DXの実現に貢献します。
一般的なワークフロー形式だけでなく、ガントチャート形式でも業務が管理できるため、さまざまな業務プロセスに対応しています。また、ブラックボックス化しているシステム・業務を集約して管理できるほか、リアルタイムでの進捗状況を可視化することで、迅速な経営判断が可能になります。
さらに、「想定している処理時間よりも進捗が遅延しそう」「特定の業務工程や担当者にタスクが集中しすぎている」などの重要な変化を計測対象にしておくことで、アラートを受け取ることも可能です。これにより、部門管理者や経営者の方も状況に沿った迅速な判断ができるようになります。
詳細はこちらからお問い合わせください。
なお、業務のデジタル化についてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。